10年ほど前に出会ってから、何度も手に取ってしまう本があります。
道尾秀介の『向日葵の咲かない夏』。
最初にお伝えしておきます。
これは「感動しました!」「勇気をもらいました!」みたいな本ではありません(笑)
むしろ、人におすすめするのがちょっとためらわれるような、クセ強めの一冊です。
でも――。
好きなんです、この作品。だからこそ、一番最初に紹介したくなりました。
あらすじ
夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。
最初の感想は、正直「気持ち悪い」
読後感ではなく、読み進めている途中から気持ち悪さがじわじわと来る。
それはグロさとか残酷さというよりも、
人間の内面の“暗さ”や“歪み”から来る不気味さ、不快感。
ページをめくるごとに、目に見えない「違和感」が積み重なっていきます。
「ん?」「なんか変…」と感じながら読み進めるうちに、
その“違和感の正体”が、終盤にかけて少しずつ明らかになっていきます。
最後の一言が、頭から離れない
この本のすごさは、最後の“ある一言”に凝縮されていると思っています。
私はその一文を読んだとき、息を呑んで、ページを閉じて、
「……え?」としばらく動けませんでした。
その意味がわかったときの感覚は、ブログ初心者の私には到底言葉で表せません(笑)
できることなら、記憶を消してもう一度読みたい。
そう思えるほどの衝撃でした。
騙される快感。ミスリードの名手・道尾秀介
道尾作品の魅力のひとつは、読者の思い込みを巧みに裏切ってくる展開力。
「きっとこういうことだろう」と信じて読んでいたものが、
気づけばまったく別の意味を持っていた――なんてことが何度も起こります。
私はこの『向日葵の咲かない夏』が、道尾秀介作品との出会いでした。
そしていろんな作品を読んだ今でも、
「やっぱり、向日葵が一番面白い」と、戻ってきてしまいます。
他にも好きな作品、あります
道尾作品は、ほかにも魅力的なものがたくさんあります。
- 『シャドウ』:心理描写の深さに引き込まれる
- 『いけない』シリーズ:短編だけどぞわぞわ感が強烈
- 『ラットマン』:じわじわ来る恐怖と違和感がクセになる
- 『N』:最近読んだ中で印象に残った1冊
- 『カラスの親指』:どんでん返しと伏線回収が見事で、読後に「やられた!」と笑ってしまいました
どれも一筋縄ではいかない物語ばかりですが、
やっぱり私の中での原点は『向日葵の咲かない夏』なんです
いつかネタバレありでも語りたい…
今回はネタバレなしで書いていますが、
いつか”ネタバレありver.”も書いて語り尽くしたいくらい、大好きな作品です。
人によって好みは分かれると思います。
でも、「こういうのが刺さる人には、深く突き刺さる」。そんな本です。
気になった方は、ぜひ覚悟を持って読んでみてください(笑)
きっと、最後の一言があなたの中にも残るはずです。

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