東野圭吾の『ブラックショーマン』シリーズから
を紹介します。

今年の9月12日に「福山雅治」と「有村架純」主演で実写映画が公開予定になります。
作者が本作を執筆したきっかけは、ガリレオシリーズで湯川学を演じた福山雅治が「ダークヒーローを演じてみたい」と語ったことだったそうです。
「ダークヒーローな福山雅治を見てみたい——でも、その前に小説として面白そうだから読んでおこう」と思い、本屋で手に取りました。
読むと映画公開が待ち遠しい!映画を見る楽しみが増える一冊です。
読書感想になりますので、多少のネタバレを含みます。
犯人や事件の真相は言いませんがもしまだ読んでいない方はご注意ください。
あらすじ
故郷で父が殺害された。仕事と結婚準備を抱えたまま生家に戻った真世は、何年間も音信不通だった叔父・武史と再会する。元マジシャンの武史は警察を頼らず、自らの手で犯人を見つけるという。かつて教師だった父を殺した犯人は、教え子である真世の同級生の中にいるのか。コロナ禍に苦しむ町を舞台に、新たなヒーロー”黒い魔術師”が手品のように華麗に謎を解く長編ミステリー!
福山雅治のために書かれた小説
著者がこの作品を執筆したきっかけは、福山雅治さんの「ダークヒーローを演じてみたい」という一言だったそうです。そのため、ブラックショーマンこと神尾武史の雰囲気や話し方、見た目の描写には、福山雅治さんを想定したような印象を受けました。
ただ犯人については、物語の終盤「ショータイム」に至る前に、なんとなく察しがつきます。動機こそ最後まで明かされませんが、明らかに一人だけ様子がおかしく、読者に違和感を与えるように描かれています。
ただ、この作品の魅力は、巧妙なトリックや謎解きというよりも、神尾武史という“ダークヒーロー”が、メンタリスト級の鋭い人間観察と誘導尋問を駆使しながら会話を展開していくところにあります。
作中では武史の発言がとても多く、よく読むとその多くが曖昧で具体性に欠けています。特に冒頭で「確か……」と曖昧な言葉を使い、あえて間違った情報を差し出して相手から真実を引き出す手法は巧妙で、自分自身も知らず知らずのうちに余計なことを話してしまうタイプかもしれない、と気づかされました。
神尾武史はキャラクターとして非常に魅力的ですが、詐欺師のようにごまかしや嘘を多用するため、作中では人間性が最低とも言える存在として描かれています。
それでも、彼の内面にある人間らしさが垣間見える場面もあります。
たとえば、葬儀のシーンでは、武史が棺に手向ける花を持たずに現れたものの、棺の前で両手を合わせた瞬間、赤・白・紫の花びらを両手からこぼし、故人の胸元をそっと覆います。その姿から、家族への深い愛情や思いやりを持った人物なのだと感じました。他にも、彼の人間らしさが見える場面はいくつかあります。
最後に
作者の別の作品である「マスカレードホテル」も「ガリレオ」も実写化し、続編が映画化されているので、「ブラックショーマン」も続編として執筆された『ブラック・ショーマンと覚醒する女たち』も映画化されると考えると今後が楽しみな作品になります。
ご興味のある方は是非読んでみてください。
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