【読書レビュー】道尾秀介『カラスの親指』は本と映画、どっちからがおすすめ?

読書感想

「読むか観るか」で迷っているあなたへ

尾秀介さんの作品って、どれも独特の雰囲気と深みがあって、ぐっと引き込まれますよね。
その中でも『カラスの親指』は、続編も出ていて、実写映画化もされている人気作。道尾作品の中では比較的マイルドで、ミステリーがあまり得意じゃない人にもおすすめしやすい一冊です。

とはいえ……
「本から読むべき?映画を先に観ちゃっても大丈夫?」と迷っている方も多いかもしれません。

そんな方に、私からひとつ提案があります。
最初は映画から入ってみるのが、意外とおすすめです。

この記事では、私自身が映画と書籍の両方を楽しんで感じた「映画から入るメリット」を、
できるだけ、ネタバレなしでご紹介していきます。
これから『カラスの親指』の世界にふれる方の、参考になったらうれしいです。

あらすじ

人生に敗れ、詐欺を生業として生きる中年二人組。ある日、彼らの生活に一人の少女が舞い込む。やがて同居人は増え、5人と1匹に。「他人同士」の奇妙な生活が始まったが、残酷な過去は彼らを離さない。各々の人生を懸け、彼らが企てた大計画とは? 息もつかせぬ驚愕の逆転劇、そして感動の結末。道尾秀介の真骨頂がここに!


書籍と映画、それぞれの魅力

書籍版の魅力

まず、原作小説はけっこうしっかり読みごたえがあります。
ページ数にすると520ページほどで、じっくり腰を据えて読むタイプの作品です。

  • 登場人物の内面や背景が細かく描かれていて、人間ドラマとしての深みがすごい
  • ストーリーの仕掛けやミスリードが緻密で、「あっ、そういうことだったのか!」という驚きがある
  • ただし、場面描写があえてぼんやりしているところもあって、最初は少し混乱するかも

読めば読むほど引き込まれていく、じわじわ系の面白さです。

映画版の魅力

一方、映画は2時間40分ありますが、作品に物語がギュッと凝縮されています。
テンポよく展開していくので、全体の流れがとてもつかみやすいんです。

  • 登場人物の雰囲気や関係性が、映像と演技で一目瞭然
  • ミステリーとしての「仕掛け」もテンポよく進むから、飽きずに最後まで観られる
  • シリアスなシーンもあるけれど、どこかあたたかくてやさしい空気感がある

映像ならではの説得力があって、「なるほど、そういう話だったのか」と自然に物語に入っていけます。

なぜ映画から入るのがおすすめなのか?

小説も映画も、それぞれにしっかりとした魅力があります。
どちらから入っても楽しめますが、個人的には「まず映画から」がおすすめです。

その理由を、3つのポイントに分けてご紹介します。

理由①:物語の全体像がつかみやすい

小説は登場人物が多く、それぞれに背景や過去が丁寧に描かれています。
そのぶん、最初は少し情報が多く、誰がどの立場なのか把握しづらいと感じるかもしれません。

映画の場合、登場人物の表情や関係性が視覚的に伝わるため、物語の流れが自然と頭に入ってきます。
展開もテンポよく進むので、全体像をつかむには映画の方が入りやすい印象です。

理由②:ミスリードの仕掛けに惑わされにくい

原作には、意図的に読者を惑わせるような描写が含まれています。
それがミステリーとしての面白さにつながっているのですが、初めて読む場合は戸惑うこともあります。

映画では、必要な情報が映像や演出で補われており、ストーリーの流れを素直に追いやすくなっています。
あらかじめ全体像をつかんでから小説を読むと、仕掛けの巧妙さや伏線の美しさに改めて気づけるのも魅力です。

理由③:読み始めるハードルがぐっと下がる

原作は520ページを超える長編で、読むにはある程度まとまった時間と集中力が必要になります。
忙しい日々の中では、最初の一歩を踏み出すのが少し大変に感じることもあるかもしれません。

先に映画を観ておくと、物語の雰囲気や登場人物の魅力をあらかじめ知ることができ、小説にも入りやすくなります。
内容を知ったうえで読むと、一文一文の意味や心理描写の深みもより味わいやすくなると思います。

映画を観たあとに小説を読む楽しみ

映画で『カラスの親指』のストーリーを一度体験すると、小説に対する見方が少し変わってきます。
すでに全体の流れや登場人物の関係性が頭に入っている分、細かい描写や心理の動きにじっくり目を向けることができるようになります。

たとえば、映画では一瞬で過ぎていったシーンが、小説では丁寧に描かれていて、「こんな感情があったのか」と気づける場面がたくさんあります。
伏線の張り方や、ミスリードの仕込み方にも目が行きやすくなり、作者の巧みな構成に改めて驚かされるはずです。

また、小説では映画で描ききれなかった人物の背景や過去が深く掘り下げられており、同じ物語でもまったく違う角度から味わうことができます。
登場人物への理解や愛着が増していくことで、読後の余韻もより深いものになるのではないでしょうか。

『カラスの親指』を深く楽しむなら「映画から」がちょうどいい

道尾秀介の『カラスの親指』は、小説と映画の両方で楽しめる作品です。
どちらもそれぞれに魅力がありますが、内容の入りやすさや物語の理解しやすさという点では、映画から入るのがおすすめです。

映画で物語の流れを把握し、登場人物の印象をつかんでおくと、小説の奥深さや構成の巧みさにより気づきやすくなります。
特に、原作特有のミスリードや細やかな心理描写をじっくり味わうには、映画で全体像を知ったあとに読む方が、無理なく楽しめるのではないでしょうか。

「小説を読むには少しハードルが高そう」と感じていた方も、映画という入口からこの物語に触れてみると、ぐっと親しみやすく感じられるはずです。

ちなみに、この映画は動画配信サービスのU-NEXTでも配信されていますので、ご自宅で気軽に視聴できます。


ぜひ映画から『カラスの親指』の世界を楽しんでみてください。


そしてきっと、読み終えたあとには、登場人物たちが心に残る一冊になると思います。

今後は【読書感想】と続編の『カエルの小指』も紹介していきます。

自己紹介
この記事を書いた人
くまの部屋

現場歴7年くらいの中堅女性エンジニア。
一度立ち止まって、休職。もう一度、自分のペースで復職。

ブログでは、開発現場で見えてきた「リアルな声」、女性エンジニアとしての気づき、そして、休んだ人だからこそ語れる“これからの働き方”を綴っていきたいと考えています。
休職をきっかけに同じ境遇の人に共感でき、誰かのためになれるようなブログを書いていきたいです。

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