「Slackで投げた質問、1日たっても返事がこない。こちらから話しかけているのに、空気のように扱われる。」
そんな経験、ありませんか?
忙しい現場では、偉い立場の人のスケジュールはまるでテトリスのようにぎっしり詰め込まれています。(しかも積まれても、勝手に消えてはくれません……)
常に「通話中」「会議中」のステータス。そんな状態が“デフォルト”になっている人も多く、
確認したいこと、決めてもらいたいことをチャットで送っても、スムーズに返信が返ってくることはほとんどありません。
エンジニアの現場でもよくあるこの現象、実は「悪意のないすれ違い」から生まれていることが多いんです。
今回は、“既読スルー”が起きる理由と、どう向き合っていくかについて、現場のリアルな視点から掘り下げてみます。
“既読スルー”が起きる背景
Slackでの“既読スルー”には、決して「無視したい」という悪意があるわけではありません。むしろ、日々の業務の中で自然と起きてしまう構造的な問題が隠れています。
Slackは「非同期コミュニケーション」が前提
Slackはメールとチャットの中間のような存在で、「すぐに返事がなくてもよい」前提で運用されることが多いツールです。
でも、送り手としては“チャット=即レス”のイメージがあるため、待っている側の気持ちが先行してしまうことも。
通知が多すぎて見逃される
複数チャンネルが乱立し、メンション・スレッド・DMが飛び交う中で、本当に必要なメッセージが埋もれてしまうことは珍しくありません。
特に忙しい時期やトラブル対応中は、「後で見よう」と思ったまま流れていく──これは誰にでも起こりうることです。
返信の「ハードル」が意外と高い
Slackはカジュアルなツールに見えますが、いざ返信しようとすると「何て返せばいいか…」と立ち止まってしまうこと、ありませんか?
特に相手が上司や先輩だったり、まだ関係性ができていない場合ほど、気軽には送れないものです。
リモートワークが主流になってからは、顔を知らない相手とのやりとりが増えました。
「一度も話したことがない人に、突然Slackでメッセージを送る」──その小さな行動が、思いのほか大きな勇気を必要とします。
新人や若手にとってはなおさらです。言葉遣いに迷ったり、「こんなことで聞いていいのかな」と悩んだりしているうちに、時間だけが過ぎていく。
その結果、送り手は「スルーされた」と感じてしまい、受け手は「返したかったけど、タイミングを逃した」とモヤモヤする。
この“見えないハードル”こそが、Slackにおけるコミュニケーションの難しさを生んでいるのかもしれません。
メッセージが「行動不要」に見えている
「了解です」「確認しました」など、返事を求めているように見えないメッセージは、読み手にとって「返さなくてもよい」と判断されがちです。
しかし、送り手からすると「反応がない=読まれていない?」と不安になる。その認識のズレが、モヤモヤを生む温床になります。
返信が来ないと「本当にわかっているのかなぁ」って心配になりますよね。ただ、いいねボタンで答えてくれる人が大半です。
個人の集中スタイル・優先順位の違い
Slackを“リアルタイムのツール”として重視する人と、“あとでまとめて見るもの”として扱う人では、レスポンスの感覚も異なります。
特にリモートワークが主流になってからは、集中時間や生活リズムが人によって大きくズレていることが当たり前になりました。
沈黙が当たり前の空気になっていく
Slackでは、誰も返事をしないことが“普通”になってしまう瞬間があります。
誰かが投稿したメッセージに対して、誰もリアクションをしない。
最初は「様子見」だったはずが、「他の人もスルーしてるし…」と自分も黙ってしまう。
そうして、沈黙が積み重なっていくと、「反応しないのがこのチームの文化」になってしまうのです。
特にグループチャットでは、“みんなが見てるけど誰も返さない”という状態が頻繁に起こります。
この“沈黙の合意”は、無意識のうちに新人や若手の心理的ハードルをさらに高くしてしまう要因にも。
本来は「確認ありがとう!」のスタンプ1つでも、空気は変わるはずなのに。
何も返さない文化が根付くと、「反応する方が浮く」ように感じて、誰も動けなくなってしまう。
Slackの“沈黙の空気”は、気づかぬうちにチームの風通しを悪くしてしまう静かなサインなのかもしれません。
“返事がない”ことの心理的ダメージ
Slackのようなテキスト中心のコミュニケーションでは、返事をしないという選択肢が、当たり前のように存在してしまう。
その結果、沈黙が“正しい対応”として扱われてしまい、声をかける側ばかりが消耗していくんですよね。
「無視されるかも」という不安と、「また催促しなきゃ……」というストレス。
その両方に、私たちは日々、静かに耐えています。
やがて、催促することすらやめてしまうときがきます。
でも、それが引き起こすのは――仕事の停滞、納期への影響、タスクの滞留。(おそろしい……)
最近は、こんなことがありました。
「相手から返信がないなら、電話して直接話して」
……って、それ、チャットで丁寧に投げた意味、どこにいったの?
電話をかけるというタスクが、どんどんこちらに追加されていく。
正直、納得できない気持ちと、地味な怒りが積もっていきます。
さらに困るのは、こんなパターン。
締め切り直前に「どういうこと?」と返事がくる。
いや、それ、だいぶ前に投げてましたよね?
こちらとしては、不満と焦りと怒りが一気に押し寄せます。
進捗にも影響が出てしまい、本当に困るんです。
クライアントならまだしも、社内の上司や部下がそうだった場合はなおさらです。
そんなとき、ふと頭によぎるのは――
「これ、私、ないがしろにされてない?」という、やりきれない感情がわいてきます。
その結果、信頼関係への悪影響と
“自分ばかりが動いている感覚”への疲れ
「する側」の無意識
Slackで誰かのメッセージを読んだあと、「あとで返そう」と思っていたのに、そのまま忘れてしまった──
そんな経験、ありませんか?私はあります。何度も。
通知だけ見て「ふんふん」と思いながら、他の作業に戻ったら、そのまま記憶からすっぽり抜けていた。
あるいは、複数のメッセージが溜まっていて、「あとでまとめて返そう」と思ったまま数日経ってしまった。
Slackは便利な分、「読んだこと」と「返信したこと」の区別が自分の中で曖昧になりがちです。
しかもメッセージを開いた時点で“既読”になってしまうので、相手から見ると「スルーされた」ように見えてしまう。
でも実際のところ、“スルーした側”には悪意はゼロ。むしろ、「返すつもりだったのに…!」という罪悪感すらあったりします。
特にマルチタスク状態のときや、会議が続いている時は、どうしても意識が散らばってしまいます。
Slackも含めて、同時にいろんな情報が飛び交う現場では、「うっかり」は誰にでも起こりうるのです。
“する側”も、“された側”も、ほんの少しのすれ違いが、静かなモヤモヤにつながっている。
だからこそ、「無意識だった自分」を責めすぎず、でもちょっとだけ気を配れるようになれたら、コミュニケーションはきっと変わっていきます。
私なりの対策と工夫
“既読スルー”が悪意のないすれ違いから生まれているなら、必要なのはほんの少しの工夫と、ゆるやかなルールづくりです。
完璧を求めず、できるところからチームのコミュニケーションを改善していきましょう。
リアクションスタンプは「見たよ」のサインに
Slackのスタンプ機能は、想像以上に強力なコミュニケーションツールです。
「👍」「👀」「🙆♀️」などの軽いリアクションでも、「確認済み」「読んでます」という安心感が相手に伝わります。
内容に対する返信がすぐできなくても、「存在を無視されていない」と思えるだけで、受け取る側の気持ちはぐっと軽くなります。
ちなみに、私自身、よくTeamsの「アボカドの愛」リアクションを使います。
ユニークでかわいくて、でもちゃんと“共感してるよ”って伝わる。
そんな身内向けのあたたかいレスポンスも、実はチームづくりに効いているのかもしれません。
メンションの使い方をちょっと工夫
誰に返してほしいかが明確でないと、返事がつかないことも。
「@佐藤さん、お手すきのときにご確認いただけると助かります!」など、やんわり伝えることで相手も返しやすくなります。
気軽な「仮返信」を許容する文化
「とりあえず確認しました!詳細は後ほどお送りします」などの“仮返信”をOKとする空気があると、ハードルはぐっと下がります。
返事を完璧に仕上げようとしているうちに、返信が遅れたり、忘れたりするケースも多いからです。
スルーされたときの「再投げ」も、責めずに自然に
「忙しいかと思いますが、念のため再送させてください🙏」
こんな一言を添えるだけで、催促が“圧”ではなく“気配り”になります。
受け取る側も「うわ、忘れてた!助かる!」と思えるので、関係性もギスギスしません。
Slackでのやりとりは、文字だけのやさしい戦場。
だからこそ、ちょっとしたリアクション、少しの言い回し、たまの再送──
その積み重ねが、“既読スルーのない”やわらかな現場をつくっていきます。
Slackの“既読スルー”問題は、バグじゃない、仕様でもないが、
けれど、それが積もるとチーム全体のパフォーマンスに影響する“隠れた技術的負債”のようなものだと、私は思っています。
コードのリファクタリングと同じで、
コミュニケーションも、少しずつでも手を入れていけば、きっと未来が変わる。
「誰かが直すだろう」ではなく、「自分から一行、書いてみよう」
そんな気持ちが、静かな空気を少しずつ動かしていくはずです。
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