【読書感想】『休養の地図』ーメンタルダウンという暗闇から抜け出すための地図ー

読書感想

今回紹介するのはメンタルダウンで休職を経験し、復職してから「5年後も再発せずに笑ってはたらく」を目標に奮闘中のくっぺ@復職の人さんの著書『休養の地図』です。

著者は二度の休職から職場復帰し、この本では復職後に再発しないために
”休養をしている時期に何をするか”そしてその先にある“健やかに生きる方法”のヒントを教えてくれます。

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私がメンタルダウンで休職し、復職を決めたとき、不安がありました。
どれだけ復職準備をしても、復職後の状況は人や会社によって異なり、実際に働き始めてみないと分からないことが多いからです。

具体的にどうすればよいのか。「復職後もメンタルのバランスを保ち、再発を防ぐには何が必要なのか。」「どうすれば健やかに働き続けられるのか?」という問いのヒントを得たいと思い、この本を手に取りました。

『休養の地図』は、休職中の方、これから復職を控えている方、あるいはメンタルの不調を感じているすべての人に向けた一冊です。

休養をしている時期に何をするか

”休養の期間の過ごし方”こそ、未来の自分を助けると著者は語っています。
著者は「うつ病で休職した人のうち、約5割が5年以内に再発、再休職する」
というデータを目にしてから、5年後も働いていられるために、本気で対策を考えました。

ですが、SNSや書籍からは「回復時に何をしたらいいのか」「復職準備や継続して働くこと」の情報や体験談があまりなかったようです。

そこで、SNSを通じて自身の学んだこと失敗談を日々発信することを続けた結果、
その輪は広がりお互いを励ましあい、助け合う仲間ができたようです。

さらに継続して働くための成功確率を上げるためには、
6つの基準があると考えました。

①気力・体力・集中力が戻っている
②ストレス対処法(コーピング)が身についている
③病気の原因分析・対策ができている
④趣味を増やすことができている
⑤家事の習慣化ができている
⑥新しい価値観を作ることができる

ここで出てくる「コーピング」とは『ストレスを感じたときに、そのストレスに対して意識的に対処しようとする思考や行動のこと』を指します。

著者は①②③⑥をしたうえで、④と⑤を整えた結果今は3年以上継続して働いています。

この経験から日常という土台を整えることが必要であると綴っています。

さらに、この6つの基準を満たせるように休養期間を過ごすことで、自分との付き合いが上手になり
メンタルダウンを感じながらでも仕事を続けている方に参考になる内容になっています。

”戻ったていい”休養の地図をゆっくり歩んでいく

この本では休職後、休むことから復職後に向けての準備までをステップ1~6の6段階に分けて記載をしています。この6段階を実践することが復職後に長く働けるヒントとなっています。

心と体と脳を休めること

心や体が疲れているときは、「せっかくの休みだから何かしなきゃ」と無理に充実させようとしなくて大丈夫です。そんなときこそ、何もしない時間や、ゆったりとした行動を選ぶことが、心と体を休ませてくれるはずです。

それでも考え事が止まらないときの対処法を2つ挙げています。

外在化をする

罪悪感や申し訳ない気持ちで頭がいっぱいになったとき、
自分の気持ちを外に出し、客観的に見ることを進めています。
ノートなどに書き出すことで、問題と距離を置くことができ、落ち着く効果が得られます。

観察する

その場に浮かんだ思考を第三者目線で観察することを指します。
「ふーん。そうなんだ」と右から左に流していく。
こちらも、問題と距離を置いて落ち着く効果が得られます。

復職後のお守りとしてあったほうがいいもの

動けなくなる前に自分自身を助ける手段として、いくつか紹介されていますが、
私が実践していること・したいことをここでは書いていこうと思います。

セルフケアを身につける

セルフケアの中でも有名な方法のひとつに「コーピング」があります。
コーピングとは、ストレスを感じたときに、それに対処するための意図的な思考や行動のことです

著者はコーピングという概念に出合うことで、自分とうまく付き合えるようになった大きな収穫であったと言っています。

たとえば、私がストレスを感じたときは、こんなふうに自分でケアしています:

  • 気持ちを紙に書き出す
  • 深呼吸をする
  • 話が通じない相手を「猫だと思う」ことで、距離感を取る

こうしたコーピングの“引き出し”をたくさん持っておくことで、
ストレスに早めに気づき、対処しやすくなります。
そして結果的に、自分の心を守ることにつながっていると感じています。

趣味を増やすこと

人生に彩りを添えてくれるもの——それが「趣味」だと思います。
さまざまな書籍を読んでいても、必ずと言っていいほど「趣味を持つこと」が推奨されていますが、この本でもやはり、趣味を持つこと・増やすことの大切さが語られていました。

なかでも特に、「何かを作る」「何かを育てる」といった趣味は、
自分が主体的になって取り組み、継続していく過程そのものを楽しめるという点で、とてもおすすめされています。

私自身は最近、編み物を始めました。
少しずつ形になっていく過程が面白く、大きな作品が完成したときには、とても達成感があります。

また、読んだ本を記録する「読書記録」も、いまのブログにつながる趣味のひとつです。

ですが、毎日は書けないこともあります。文字を読む気になれない日だってあります。
そんなときは、ONE PIECE(漫画)を読んだり、YouTubeやアニメを観たり、
気分にあわせてまったく違うことをして過ごします。

ただし、趣味にも“向き合い方”は大切です。
たとえば、オンライン対戦ゲームのように脳をフル回転させるものは、楽しい反面、寝つきが悪くなったり、つい夜更かしして翌朝に後悔したりすることもあります。
今では、そうした趣味は頻度を抑えて、ほどほどに楽しむようにしています。

家事を習慣化する

先ほど紹介した「セルフケアを身につける」と「趣味を増やす」はこれまでで読んだ書籍の中で
たくさん紹介されていました。

ですが、「家事を習慣化する」ことの大切さについてここまでたくさん書かれた本はそんなに読まなかった印象です。

家事ってめんどくさいイメージありますよね。

ですが、身の回りを整え、おいしいご飯を作ることでフルタイムで仕事ができる状態を見据えて家事をするメリットを教えてくれました。
著者が「家事」を進める理由は仕事を辞めても、定年退職しても暮らしは続いていくことに気づき仕事以外のことから変えていこうと気づいたためです。

そして、「家事」がもたらす効果は「前進感」「貢献感」そして「達成感」を味わえることであると教えてくれます。

再発しないために「新しい自分に生まれ変わる」

復職の準備をする際によく「休職前の自分と違う自分になること」と言われます。

なぜなら、元の考え方もままで同じ環境に戻っても、同じパターンで状態が悪化し、再発するからです。同じパターンに陥らないように対策することが大切だからです。

そして、その対策とは「新しい価値観を作る」ことです。

病気の原因には、二つの要因があります。

・職場環境や上司などの「環境要因」
・自分の性格などの「個人要因」

「環境要因」については、転職や部署移動で解決できる場合がありますが、 元いた職場に戻らないといけない人もいるでしょう。

その場合、変えられるものを変えていく、つまり、自分の性格や考え方をアップデートする必要があります。

実際に著者も同じ職場に戻ったケースであり、自分の性格や思考の傾向を、見つめ直し、
「人から評価されたい」という思いが強かったそうです。

苦しくなって休職したとき、 「できる自分が自信の拠り所」だったため、
”仕事ができる自分”という自信の拠り所を失ってしまったと著者は語っています。

私の場合は、「他者優先・自己犠牲」だけでなく、「過小評価」や「マイナス思考」などがありました。これらの思考に対して、再発防止策を考え、以下のように新しい価値観を考えるようにしています。

「他者優先・自己犠牲」→自分を大切にする

「過小評価」→小さなことでもできたことを褒める

「マイナス思考」→誰かに話す。誰かと解決策(プラスになること)を考える

「マイナス思考」には加えて『学習性無力感』が強く働いていました。

『学習性無力感』
抵抗したり回避したりすることができないストレスの渦中に置かれているうちに、そのストレスから逃れようとする行動を起こさなくなってしまう現象

今でも、この行動は変えられず、今を耐えようとしている自分がいます。

今はそんな自分もいることを認知して、日記や話せるときに誰かに話すことをして、
「何をしてもどうせできない」「何をしてもどうせ変わらない」という思考と戦っています。

復職の準備をする

どれだけ復職準備をしても、復職後の状況は人や会社によって異なり、実際に働き始めてみないと分からないことが多いからとお話ししました。

ですが、唯一わかっていることは「調子を崩す」ことは絶対あるということです。

「私はない」と思っていましたが、普通に調子を崩しました。侮っていました。。。

この本書では”調子を崩さないことより、調子を崩してしまう自分との折り合いをつける”ことが大事な姿勢であると伝えています。

調子を崩して休んでしまうことは、甘えでもなく、罪悪感を感じる必要はなく
”それだけ頑張ったんだ”自分を労うことも併せて実施することが大事です。

また『復職後のお守りとしてあったほうがいいもの』でも紹介した「セルフケアを身につける」で、「コーピング」を紹介しました。この「コーピング」を”職場復帰バージョン”として作成することも効果的であると著者は言っています。

コーピングリストに「旅行に行く」と書かれた場合、職場復帰後にストレスを感じたときに突然「旅行に行く」ことなんてできないですよね。

そのような時に、”職場でもできるコーピング”を持っておくことで安心感が生まれます。

私の場合は、「パソコンから離れて、フリースペースに移動する」や、「コンビニに散歩しに行く」、「Yahooニュースを1記事だけ読む」などを実施しています。

「60点主義」で働いて余力を残す

終章では実際の職場復帰がどうだったかが書かれています。
どんなに準備しても復職の職場の雰囲気は、実際に行ってみないと分からないですよね。

著者はとても暖かく迎え入れてもらえたようで、たくさんの仕事仲間に声をかけてもらえたようです。このような体験談があると、「私も大丈夫」と思えますし、復職した人に対しても言葉を書けやすいです。

また自分の病気についても開示するかしないかで大きく変わってくると思います。
私の場合、直属の上司は知っていますが仕事を一緒にしているメンバーには伝えていません。

身近な人に事前に開示することは、コミュニケーションがとりやすくなり、早めの対処ができるメリットがあるからです。

私は復職してしばらく経ちましたが、「自分の周りは忙しいのに自分は定時で帰っている。。。」
このような罪悪感が否めないです。そして、いつかこの忙しさが自分にも降ってくると考えてしまい今後の働き方も不安になってしまっています。

『休養の地図』を読み返して

自分は今転んでから立ち上がろうとしている時期だ。他の人とは段階が違う。
少ない業務でも疲れてしまうのは、長く休んでいたから当然。
遅れたぶんを取り戻さなくていい。自分は一歩ずつ進んでいこう。

この言葉にハッとしました。1年という休職をしていたため。
早く皆に追いつこうとしていた自分がいました。

今の私に1番必要なのは、1ヶ月、3か月と安定して出社できることができることだったからです。
そして、意外に「早く追いつくこと」なんて求められていないんですよね。
今日やる仕事をちゃんとやることが目標に、終わったら定時で帰る。必要以上に日ごとを探さないように心がけました。

ただ、その考えは1ヶ月は守られました。
ですが2か月目になるとやはり、「自己犠牲」「学習性無力感」な自分が出てきてしまいます。

今後は、この思考たちをどう生きていくかを日々アップデートしながらいくて行くことを課題にしています。

「60点主義」で働いて余力を残す。

これは著者が職場復帰した時に心がけた言葉です。

これは、仕事の手を抜くという意味ではなく、 まずは60点くらいを目指して終わらせる。 そして、余裕では家事のことに費やすことをしていました。 仕事がうまくいかなくても、出勤して帰っただけで50点と考え、 それでも買い出しに行って、夕飯を作ったので20点、 合わせて70点、そのように暮らしを含めて100点を目指すようにしています。

もちろん100点を達成できなくても、家事や趣味で褒めポイントを作ることで60点をクリアします。 著者はこのように考え、自分を励ましていました。

不安やストレスはなくならないけど、減らすことはできる

私は休職する前と後でしばらくは、寝る直前まで仕事のことが
頭から離れず、夢の中でも仕事をする慌ただしい思考を繰り返していました。

休職してからも何か別のことで悩みや復職への不安があるとどうしてもそっちに集中力を持っていかれがちになります。また、「学習性無力感」が強く”耐える”ことに慣れてしまっていたため、今でも悩むことはあります。

そこで、リワークセンターでも外在化をお勧めされ、自分の気持ちを書き留める練習をしました。
すぐにスマホのノートに書き留めることで「後で考えよう」落ち着くようにしています。

不安やストレスはなくならないけど、減らすことはできる

私が本書から得たことは、不安やストレスはなくならないけど、減らすことはできる。
そして、そのための実践できるたくさんのヒントでした。

できること、興味があること、効果があったものは人それぞれだと思いますが、
そこから発展して自分だけの“健やかに生きる方法”を見出したいと考えています。

自己紹介
この記事を書いた人
くまの部屋

現場歴7年くらいの中堅女性エンジニア。
一度立ち止まって、休職。もう一度、自分のペースで復職。

ブログでは、開発現場で見えてきた「リアルな声」、女性エンジニアとしての気づき、そして、休んだ人だからこそ語れる“これからの働き方”を綴っていきたいと考えています。
休職をきっかけに同じ境遇の人に共感でき、誰かのためになれるようなブログを書いていきたいです。

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